【本朝廿四孝】十種香
2016年 09月 13日
長尾謙信館の場(十種香)
前の場(二段目武田家館の場)で切腹の<勝頼と朝顔の事柄>を引き継いで、勝頼の衣裳は、鮮やかな赤の着付けに、長裃は清らかな若い武士を想像させる朝顔の青色又は、秋の朝顔と言われる桔梗の花の色。桔梗は運命を案じる花。
浄瑠璃「思案にふさがる一間には」奥より勝頼が現れ思案な形できまる
浄瑠璃「館の娘八重垣姫、許嫁ある勝頼の切腹ありしその日より・・・」
上手ゆっくり赤姫の姿が見えます。後向き、左手に数珠を持ち、許嫁の勝頼の絵姿に向かい拝んでいる。
浄瑠璃「こなたも同じ松虫の・・」
下手に濡衣はこちら向きで切腹を遂げた勝頼(取替え子)へ御経をあげている。
ちょうどこの日は、勝頼の命日
「我身代わりに相果てし勝頼が命日」と本物の勝頼。
浄瑠璃「暮れゆく月日も一年あまり、南無幽霊出離生死頓生菩提」
上手の八重垣姫「申し勝頼様、親と親との許嫁、ありし様子を聞くよりも嫁入りする日を待ちかねてお前の姿絵に描かせ、見れば、見るほど美しい、こんな殿御と添い伏の・」
浄瑠璃「月にも花にも楽しみは絵像のそばで十種香の・・・」
これ迄、後ろ向きの八重垣姫
がやっとここで前を向きなおる。
浄瑠璃「回向せうとてお姿を絵にはかかしはせぬものを」
と語りの通り、いやいやをしながらきまり
浄瑠璃「可愛とたった一言のお声が聞きたい、聞きたいと・・・」「流ていこがれ見えたもふ・・」とハァと泣く。
勝頼「あの泣き声は八重垣姫よな・・・」
濡衣とのやりとりがあり
勝頼の姿を見ながら
濡衣「わたしゃ、輪廻に迷ふたそうな」で濡衣も泣く
浄瑠璃「泣き声漏れて一間には不審立ち聞く八重垣姫」
そっと障子を少しあけ
八重垣姫「ヤ、勝頼様か」
ここからの三味線と語りと八重垣姫の心中のやりとり、絵姿と絵姿に似た目の前の男性幻を見るように
浄瑠璃「立ち戻って手を合わせ・・」
心の乱れを祓う八重垣姫。
しかし、気になる気持ちを押さえきれず、障子をまた少しあけ絵姿とまた見比べる。
浄瑠璃「見比べるほど生き写し・・・」
語り通りに首を合わせ、絵姿へきざんで振りこむ、そしてまた勝頼に似た人を見る。と
浄瑠璃「・・勝頼様じゃないかいの、と、思わず一間を走りいで・・」
八重垣姫は手に持つ数珠に気づき、数珠を、打ち捨て、髪や襟を直すこと、姫のおてんばな様子にも、品位ある清らかな色気が匂い立つ。
八重垣姫「勝頼様、おなつかしゅうござりましたわいなぁ」
浄瑠璃「すがりついて泣きたまえば」
このお芝居の最初の難関であり、見どころでもあります。
八重垣姫は、三姫のひとつと言われている大役です。
格と品、そして高尚な色気を必要とされます。
衣裳は、きまりもので
緋綸子に四季の花の刺繍
帯は、白地織物。
by ooca
| 2016-09-13 03:07
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