市川櫻香の日記


by ooca
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昨日と【黒谷】

昨日のあいらぶかぶきは、久しぶりのお三味線のお稽古と、車引、義経千本桜奥座敷の安徳帝のお稽古でした。
皆さんに、歌舞伎の台詞を指導するのは、浄瑠璃を土台に指導します。現代的な発声との違いは、母音を使う声の力の出し方にあります。
昔、浄瑠璃の先生から、お稽古を終えてお話しして頂いたことを引用しています。【ろうそくの炎を動かすことなく、語る】このことを実行するのは、ろうそくの炎を想像さえできれば、実際にろうそくがなくても、先生がお伝えになりたいことを体に身につけることはできます。
安徳帝役の一番小さな女の子は、お歌を歌うように母音を歌いがちです。ろうそくの代わりに手の平に、口を近づけ、母音があたる感覚を息でなく、お腹からぐっとのぼってきた気のような力、これをあてるようにと、伝えてみました。少し言葉足らずで、時間となってしまいました。梅王丸をお稽古しているしっかりさんの男の子、台詞を息で切ることで理解しようと工夫をしていました。あともう一歩です。次のお稽古まで、さらに工夫を、重ねていることを楽しみにしています。皆さん、頑張ってください。

来月末に、團十郎先生、ぼたんさん、海老蔵さんご出演による、国立能楽堂での舞踊、市川流リサイタルが開催されます。【黒谷】を、ぼたんさんの敦盛、玉織、小次郎の三役で上演されます。お父様とお二人での黒谷を、いつか拝見したいと思っていました。【黒谷】は、歌舞伎【熊谷陣屋】の後日譚です。能楽堂の空間に、過去と今を往復しながら、熊谷次郎直実の精神の葛藤が現れてきます。それは、亡霊に語らせながら、また、戦場に生きた武士が、人間の本質に目覚めていく心を、太棹にのせて。
團十郎先生がお書きになられた、この黒谷の初演を名古屋能楽堂、櫻香の会でさせて頂いたことは、大変ありがたくもったいなく思っています。あの時期は、ご病気後のことでした。團十郎先生の身体が、私には、空間と身体の稜線が溶け合っているように、透明に感じられました。能舞台の立体空間の中を、一杯に、團十郎先生のすべての気能からつくりだされた黒谷は、人間の可能性を強く感じとることが出来ました。12代團十郎師のすべてが現れていくのでしょう。大病と向き合われた、術後、お打ち合わせに伺いました病室での團十郎師の横顔は、【黒谷】の庵の炉の火を見つめておられるようであったと、このところ思いかえしています。8月31日(金)の上演、心より嬉しく待たれます。
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by ooca | 2012-07-22 18:13