ウツロヒ
2017年 09月 11日
天と地には境がなく、姿があるのはこの世。
形を持つのは、姿を持たない次に向かうため。
形はいわば、ざるの目に濾される砂のようで
日々に濾されていけば、いつか静かに一粒も残らず消えていく。それは、体温の温もりと、心のぬくもりが、やがてひとつになる時といってもよい。
体温は失せ、存在のぬくもりのみとなる。優しさは、ここにこそ、それは身体のない存在をあらわすそのときのために。
「おや、地球は?」「地球はそらそこさ!」
黒雲を走らせ、竹の葉すさふ、風の音にのり
竹取の里へ行くよう、天のおとどに命じられたウツロヒ。空から見る人は、我執により、沈んだものに見える。晴れやかでない月を見ているようである。
空を見上げ、言葉をかける人など、めっきり減った。悲しみや苦しみにあって、月を見上げる人も減った。
空や月を見上げたとき
たしかに温もりを感じたはず、頭をなでられたような感触に驚いたこともあった。懐かしいと優しいが入り交じって体を包む。
「竹取」の翁のうつろひ
「今は昔、竹取の翁といふもの有りけり」
上演が近づいております。
来週9月17日。
名古屋能楽堂です。
by ooca
| 2017-09-11 19:56